第7章 フクロウの夜明け
外に出て、体育館近くの人通りの少ない段差に座り、花菜は京治が来るのをじっと待っていた。
明るかったはずの空はいつの間にかうっすら暗くなってきている。
なにを話そうか。話したいことがありすぎて逆に分からなくなってしまう。
そんなことを考えながらぼうっと空を眺めていると、背後から待ち構えていた声が聞こえた。
「ごめん 少し遅くなった」
「ううん!私も来たばっかりだよ」
「良かった」
すっと目を細めて京治は花菜の隣に腰を落とした。
腕と腕が少しだけ触れる。何となくいたたまれない気持ちになって、花菜は体育座りをするように手を組んだ。
「「あの ──」」
互いの声が重なって花菜と京治はパチリと目を合わせる。
その瞬間、まるで緊張の糸が解れたようにふたりは小さく笑い合った。
「まさか被るとは思わなかった」
「あぁ 俺も。でもおかげで肩の力が抜けた気がする」
「そうだね」
花菜と同じように京治も緊張していたらしい。全然動じてないように見えたのに、少し意外だった。
新たな京治の一面を見れた花菜は嬉しそうに笑みをこぼした。
「会えてよかった」
数年越しに耳に届いた優しい音色。
本当に京治くんだ。
また、京治くんと会えたのだ。
思えば思うほど信じられなくて花菜はまだ少し動揺している。それでも、懐かしい彼の声を聞くと なんだか不思議と安心出来た。
「京治くんはずっとバレー続けてたんだね」
「あぁ。今はこの通り、梟谷でセッターをやらせてもらってる」
「梟谷の攻撃すごかったなぁ。特にエースの… 木兎さん? あの人のスパイクは本当に触ったら腕もげそうだったもん」