第1章 また会えるよ
実のところ花菜の家からだと、烏野よりも青城の方が圧倒的に近いのだ。
花菜自身、中学まではプレーする側としてバレーボールをやっていた。父親が高校の体育教師なだけあり、花菜も運動神経は抜群。北一女子バレー部の中でも際立って実力のある選手だった。
それでも花菜が烏野を選んだのにはわけがある。
烏野高校は、花菜の両親が初めて出会った特別な場所だったからだ。
父と母が青春を送った烏野に入学するのだと、花菜は宮城へ引っ越してきたあの日から決めていた。
どれだけ及川に青城を勧められても、その思いが揺らぐことはなかった。
尊敬する先輩の誘いでも、両親の青春には勝てない。及川の数々の勧誘を思いだして、ランニングの足を動かしながら花菜は苦笑いを浮かべた。
烏野に入学し、男バレのマネージャーになって2年生に上がり、もうすぐ一学期も終わろうとしている。
落ちた強豪 "飛べない烏"
そう言われていた烏野に今年、日向や影山が入部して烏野の異名は終わりを迎えようとしていた。
このメンバーでなら本当に、全国を目指せるかもしれないと、本気でそう感じている。
特にここ最近 メンバー全員の空気が変わった。
もちろん、花菜もそのひとりである。青城に敗れた悔しさはみんな同じだ。悔しさをバネにして、これからどんどん強くなるのだ。
── 負けていられない
目指すは春高。とうとう迎えようとしている新しい夏に花菜はこれまでにないほどワクワクしていた。