第4章 新しい仲間
「徹先輩、もしかして身長伸びましたか?」
「あぁうん。184はあると思うよ」
どうりで及川を見上げると首が痛くなるわけだ。
羨ましいです、と花菜は呟く。
「ははっ。でも花菜はそれ以上伸びなくていいよ」
「何でですか?」
「今の高さが一番頭撫でやすいから」
「っ…!」
急に触れた大きな手に花菜は過剰に反応してしまった。
いつもなら何事もなく流しているところだ。それもこれも、さっきの美羽との恋バナのせいである。
美羽が彼氏だなんて言うからだ。
とにかくまずは落ち着こう。
「す、すみません。ちょっとびっくりしただけです」
「え? あ、いや…」
動揺しているのは花菜だけではなかった。
いつもならスルーされるような、ほんの小さなスキンシップ。及川もまさか花菜がこんなに意識してくるとは思っていなかったのだ。
変に、思われたかもしれない。
今の一連の流れを思い出すだけで花菜の頬には自然と熱が集まった。そもそも何故、今までスルー出来ていたのだろう。
心臓の鼓動がドキドキと早くなるのが自分でも分かる。
すっかり黙りこんでしまった花菜だが、及川も及川で色々と思うことがあった。
ただ、とりあえずはこの空気をなんとかしようと、及川は「あ」と空高くを指差した。
「流れ星だ」
「えっ どこですか?」
「残念~もう消えちゃったよ」
「そんな!私小さいときから、お願い事を速く言えるように練習してたのに…」
「どんな願い事?」
及川の問いかけに花菜はすっと目を閉じた。
私の願い事はずっと昔からひとつだけだ。
「私と関わる全ての人がいつも笑顔でいられますように」
閉じた瞳をゆっくりと開いたその一瞬、花菜の長い睫毛が小さく揺れた。