第3章 公式なんていらねぇ!
「それじゃあ問題。今覚えた公式の穴埋めです。次の□に当てはまるものはなんでしょう」
「簡単だぜ!」
西谷はバンっと机に両手を当てて自信満々に立ち上がる。
「人生に公式なんていらねぇ!それが俺の答えだ!!」
「っ、ちがーう!」
これ見よがしに大きな溜め息を吐いて花菜はガクッと頭を落とした。
そうだ。
彼はこういう男だ。期待した自分がバカだった。
「ノヤっさんかっけぇぜ」
こうなったら、この公式だけでも絶対に覚えて帰ってもらおうと、花菜は心に決める。何がなんでも。
「「うぉっ!?」」
「これを覚えるまで、教室には帰さないから。全力で覚えてね」
「あらら、花菜を本気にさせちゃったわねー」
柚は可笑しそうにクスクスと笑った。
ふたりの肩をガシッと掴んだまま花菜は満面の笑顔を見せる。まるで澤村のような威圧感に田中西谷はハイと小さく返事をした。
その日の午後の練習は田中と西谷がやけに花菜に絡んできた。終いには何故かマネージャーの仕事まで率先して手伝ってくれた。
「田中ジャンプの高さ落ちてるー!」
「ハイッすみませんッ!」
「花菜さんッ俺のレシーブフォームどうですか!?」
「うんいい感じ!」
「アザーッす!!」
いつも全力な2人だが、今日は特に気合いが入っているのが目に見て分かる。昼の勉強のおかげだろうか。
やる気満々のふたりにつられて花菜もいつも以上にギラギラしている。
「ノヤっさんたち、なんかあったんですか?」
「あー気にしないでいいよ。たぶんあいつら結城のスパルタに感化されただけだから」
結城がいてくれると助かるんだよな、と感心しながら縁下は言った。花菜のお陰で他の2年は随分と楽になったようだ。
今後、花菜を怒らせるのはやめようと日向は固く心に決めた。