第3章 公式なんていらねぇ!
東京遠征を来月に控えた烏野バレー部。
そんな彼らに、今学期最大の試練が訪れていた。
「来月になったら期末テストあるの…分かるよね。で、予想はついてるかもしれないけど、赤点の教科があった場合 その補習が週末に行われる。遠征には行けないから」
そんな武田の言葉を受けてガーンと震え怯えるのは、言わずもがな低得点者たち。
いつもの癒しスマイルはさっぱり消えて、本日の武田は恐ろしい教師の顔をしている。
これはなかなかまずそうだ。
「おい!どこにも逃げられないぞ。縁下、捕まえろ!」
「はっ!」
突き付けられた現実から1秒でも早く逃げ出そうと、瞬時に足を走らせた田中と西谷だが、すぐさま澤村と縁下により捕まってしまう。
言うまでもなく、2年の中で問題なのは田中と西谷のふたりである。1年生にとっては初の定期考査となるが、どうも日向と影山がまずい様子だった。
困ったことに、問題なのは見事にレギュラー陣ばかりだ。
その後の話し合いで2年生の中では昼休みや部活前後を使い、進学コースの縁下や花菜が交替で西谷と田中の面倒を見ることになった。
またしばらく大変な日々が始まりそうだ。
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「あ、これだ!」
土曜日の部活おわりに花菜は一人で図書館に寄った。探していたのは、教科書に載っていたとある小説だった。
テスト範囲となるのは教科書部分だけだが、こういうものはどうしても最後まで読みたくなってしまう性なのだ。
花菜の読書好きは亡くなった母譲りである。国語の教師だった母は、小さい頃からたくさんのお話を花菜に読み聞かせてくれた。
特別、勉強が好きなわけではない。
けれど、努力した分だけ点数となって返ってくるテストは昔からわりと好きだった。
小学校の頃にテストで初めて満点を取ったとき、母がとても喜んでくれた。
それからというものの、入院生活を送っていた母を喜ばせたい一心で花菜は勉強を頑張るようになったのだ。
特に母が担当していた国語は花菜が最も得意とする科目。そして高校でも変わらず、国語のテストは学年トップを誇る成績である。