第2章 はじまりの夏
「前から思ってたんだけどよ、花菜とウシワカって知り合いなのか?」
「うん… ちょっとね」
彼とはみっともない出会い方をしたので、本当はあまり話したくはないのだけれど。
「中学のときに花菜さんが道で迷ってたとこを、牛島さんが助けて仲良くなったらしいっすよ」
と、花菜の代わりに口を開いたのは影山だった。
「そうだったのか。つーかお前は知ってたんだな影山!」
「まぁ。北一では結構有名だったんで」
西谷の声に頷きながらやや自慢気に話す影山に、花菜は懐かしげな笑みを浮かべた。
牛島と知り合ったのは花菜が宮城に引っ越してきてすぐのことだ。
こちらへ来て間もない頃、ランニング中に道に迷ってしまったときに、たまたま近くを通りかかった牛島に声をかけて助けてもらったことがある。
それからというものの、ランニングで牛島を見かけるたびに花菜がしつこく話かけた結果、なんだかんだで仲良くなってしまったのだ。
「あのウシワカを手玉にとるとは、なかなかやるな。花菜よ」
「いま思うと恐ろしいよ。よく若利先輩に声かけたなぁって… なんだか自分を尊敬しちゃう」
今だったら彼の圧倒的な迫力に躊躇って、とても話しかけることなんて出来ないだろう。
田中の言葉に苦笑いを見せつつ、花菜は必要な道具類をまとめてよいしょと持ち上げた。
「春高で宮城の代表になれるのは一校だけ。俺たちが全国に行くにはウシワカや及川を倒さなきゃいけないわけだ」
そう。どんな強敵だろうと、倒さなければその先に光はない。澤村の言葉にみんなが小さく頷いた。
「よっしゃあ!ランニング行くぞ!」
「「「おーっす!!!」」」