第10章 幼馴染の肩書き
花菜から話は聞いているらしく、影山は京治と花菜の関係を知っても驚くことはなかった。
それより色々と知りたいのはこちらの方である。
「ちょっと影山に聞きたいことがあるんだけど」
「何すか」
「及川徹のことでね。彼は… 花菜とどういう関係なんだ?」
京治が問うと影山は僅かに目を細める。
その目が映すのは "確信" と "闘争心" だった。影山の想いに京治が気づいているように、彼もまた京治の恋心を悟っているのだろう。
「赤葦さんもやっぱ好きなんすね。花菜さんのこと」
京治は答えぬ代わりに、ふっと口角をあげてみせた。
「及川さんは俺たちの先輩です。それであの人も花菜さんに好意を寄せてる一人です」
「…そうか」
そんな予感はしていたけれど、実際そうだと断言されてしまうとやはり心に刺さるものだ。
つまり 花菜と及川は相思相愛 ─
どうやら神は味方をしてくれないらしい。微かな絶望と共に京治は肩を落とした。
何年も何年も ずっと忘れられずに片思いしていた彼女と再会を果たしてから数週間。運命ってやつかもしれない、と本気で思っていた。
でも現実は甘くない。せっかく巡り会えてもまた、届きそうな背中は今までよりもっと遠くに行ってしまいそうだ。
「影山は悔しくないのか? 花菜の好きな男は… たぶんその及川さんだろ」
「俺もそうだと思ってます。花菜さんは隠してるつもりだろうけど、及川さんのこと好きなのバレバレだし。 けど、あの人に先越されるのにはもう慣れたんで」
影山はキッパリと言い切った。