第9章 変わろう
「ブロックなしでスパイク練習しても意味ないんだよ。頼むよ」
木兎のしつこい頼みに月島は怪訝そうに眉を潜めた。
「なんで僕なんですか。梟谷の人は?」
「木兎さんのスパイク練 際限ないからみんな早々に逃げるんだよ」
「俺はこいつ鍛えるのに忙しいんだよね」
京治に続いて、倒れ込んだリエーフを指さしながら黒尾が言う。
リエーフは自分がブロックを跳ぶと言い出したが黒尾がそれを許可しなかった。
「見えないかもしんないけど─ こいつ全国で5本の指に入るくらいのスパイカーだから練習になると思うよ」
木兎の実力は本物だ。烏野も既に何度か戦って彼のスパイクを目にしている。
月島だってそれは知っているはずだ。
「3本の指にはギリギリ入れないですかね」
「ドンマイ」
「落とすくらいならアゲないでください!」
それに─、と黒尾は不敵な笑みを浮かべて月島の目を見据える。
「君 ミドルブロッカーならもう少しブロックの練習したほうがいいんじゃない?」
「んっ」
黒尾の一言が月島に火をつけたようだ。
無言で体育館に足を踏み入れた月島を見て、木兎はグッジョブと親指を立てた。
─ 同じ頃、第1体育館でも日向と影山が新しい速攻の練習を開始していた。
ここ暫くはギクシャクしていた二人だが、漸く足を揃えてひとつの技を磨く時が来たのだ。
合同夏合宿 一日目の夜が始まる。