鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第23章 :7章 番外編 いじめと本音と制裁と
※第7章:壁外調査 幕間1.5
〜壁外調査 前日〜
『困ったな…着る服がない。』
少女は自室のクローゼットを開き、ため息をついた。
昨晩…ナナバに部屋に来ないかと誘われ泊まったのだが、朝自室に戻ると部屋が何者かに荒らされていた。
クローゼットの服は全て切り裂かれ、着ていた寝間着だけが無事。
仕方なく少女は、寝間着のまま部屋を出た。
ナナバに服を借りようとしたが、昨晩朝から出かけると言っていた事を思い出し…その場で足を止める。
『ハンジの服は洗濯してないし…どうしよう。』
困り果てた少女は、また兵舎内をウロウロと歩く。
と…いつもの食堂に着いた。
白いレースが沢山付いた、可愛らしいネグリジェ姿の少女は目立ち…すぐ注目を浴びる。
しかし残念ながらこの少女、人から注目される事に相変わらず無頓着だった…
兵舎内がいつもよりザワついてるように感じ、モブリットは首を傾げた。
壁外調査前日は確かに皆安定しないが、今日は雰囲気がおかしい。
すれ違う兵士達が「あっちだ!」と食堂へ向かって行く。
視線を向けると…人混みを発見した。
(何だ…何かあったのか?)
よく見ると…輪の中心に、見慣れた少女の姿が見えた。
(えっ?!まさか…)
モブリットは急ぎ足で、輪に向かう。
そして人混みを掻き分け…中心にいた人物を凝視し、目を見開いた。
「リン!!」
『あっ、モブリット!』
少女リンはモブリットに気付き、笑顔で駆け寄った。
そして少女の服装を見て絶句する。
「何て格好をしてるんだ…君は。」
少女は白いワンピースタイプの寝間着に、誰の物か分からない兵服ジャケットを肩からかけていた。
『良かった…モブリットに会えて。』
少女は安心したように笑う。
「…一緒においで。」
モブリットは肩のジャケットを持ち主に返し、自分のジャケットを少女の肩にかけた。
そして人混みから出し…周りの目に触れないよう、隠しながら歩き出した。
生憎と小さな少女の身体は、身長170cm以上あるモブリットのジャケットですっぽり隠れる。
モブリットは深く息を吐く。
「今から団長室へ君を連れて行く。どうしてそんな格好をしていて、何故食堂に居たのか…詳しく話を聞かせて欲しい。」
『うん、分かった。』
少女はいつものように、笑顔で答えたのだった。