鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第22章 :11章 番外編 夜会❷〜貴方とワルツを〜
〜数時間後〜
「リヴァイ!…あれ、リンは?」
「俺とリンは、先に兵舎に帰る。」
未だワイングラスを傾けるハンジに、リヴァイはそう告げた。
「えっ…何で?」
「あいつはエネルギー切れだ、もう1人で立てねぇ!俺が連れ帰る。」
「もしかして…寝ちゃった?」
「あぁ、ベンチでぐっすりな。今は雷獣が見てる。」
リヴァイはそう言い小さく溜息をつくと、出口付近に目を向けた。
「そう…分かった。あっ、でもちょっと待って!確かリン、帰りにサロンに寄るって言ってたよ?迎えの馬車も来るって…」
「起きねぇ奴を連れて行って、何の意味がある?借りた物は、明日返せばいい。」
「…確かにね〜分かった!じゃあ私が迎えの馬車に、伝えておくよ。」
「てめぇも、いい加減帰れ。」
「えっ?一緒に帰っていいの?」
「チッ…誰があいつのドレスを脱がせる?」
リヴァイはいつものように舌打ちをし、ハンジを睨む。
「なるほど、確かにね〜了解!じゃあエルヴィンと御者に、帰る旨伝えて来るよ!」
「俺たちの馬車も手配しろよ。」
「分かってるよ!」
ハンジは飲みかけのワインをグイッと飲み干し、グラスをテーブルに置くと…急いでエルヴィンの元へ向かって行った。
「おいリン、帰るぞ!」
リヴァイはベンチでスヤスヤ眠る少女を、揺り起こす。
『ん〜〜無理…』
しかし少女は眠そうに目を擦るだけで、起き上がる気配がない。
(仕方ねぇな…)
リヴァイはため息をついた。
そして少女の足にかけていた、自身のタキシードジャケットを落ちないように掛け直し…少女の細くて白い両腕を取ると、自分の首に絡ませた。
「首に掴まれ、運んでやるから。」
『うん…』
そう言うと少女は素直に、リヴァイの首にしがみ付いた。
リヴァイは軽々と、ドレスを着た少女を抱き上げ歩き出す。
『ねぇリヴァイ…』
「あ?」
『今日、楽しかったね。』
「…まぁな。」
『また一緒に夜会、参加しようね。』
「あぁ…お前となら、悪くねぇかもな。」
夜会は資金集めの為の仕事。
そう自分自身に言い聞かせ、いつも嫌々参加していたリヴァイだったが…この少女と一緒なら悪くない。
そう心から思えた夜だった。
番外編 夜会❷ fin.