第10章 果てる
吹奏楽部の練習。
自由練習はどこで練習してもいい。
私は適当に階段の踊場で練習していた。
簡単な練習曲をやっていると人の気配を感じた。
どうも私はそういうものに敏感らしい。宇随くんの奥さん達を探し当てるのもうまくいったが、今思えばよくやったなぁ。
あれから感化されたのだろうか。
友達が後ろから驚かせようとしてくるも私は全て気づく。男子がイタズラで飛ばしてくる消しゴムも全てキャッチ。なくし物も落とし物もすぐに見つかるし。
「、エスパーなの?」
ある日カナエに真顔で聞かれたが、私はうまく答えられなかった。
「何だかね、気配に囲まれてる感じ。むずむずするの。妖精さんが私の周りを飛んでて、誰か近づいてきたら肩を叩いてくるんだ。」
「……大丈夫?」
彼女は本気でそう聞いてきた。
そんなことを思い出しながらトランペットを吹いていたがその人が階段下で立ち止まるのがわかった。
「……」
ずっと止まっているので、まさか私が邪魔なのかと思い吹くのをやめた。
「あ」
「……霧雨…」
「悲鳴嶼先輩」
思わぬ再会に私は吹き出した。
「すみません、私邪魔ですか?」
「いや…何やら見知ったものを感じた……深い意味はない。」
そう聞いて私はハッとした。譜面台も楽譜も放り出して、楽器を落とさないように抱き締めて一段飛ばしで階段をかけ下りた。
「悲鳴嶼先輩もなんですか!?」
「…ッ、走るな。危ないぞ。」
「私、平気です!運動は得意なんですよ、嘘ではないんです!」
興奮のあまり声が高くなる。
階段を下りて先輩を見上げる。やっぱり大きい。
「先輩、私わかっていたんです!先輩がこちらにやってくるの!」
「そうか……私は帰ろうとしたら、何だか見知った気配を感じて…まぁさっき言った通りだ。」
私はやはりそれが嬉しかった。
「自分だけが変なんだって思っていました…!」
「……気配に敏感と言うことか。」
「はい!妖精さんが肩を叩いてきませんか…!?」
悲鳴嶼先輩は少し黙った。
そのあとに、優しく微笑んだ。
「妖精を信じているんだな」
……うん、話通じてないな!