第10章 果てる
「、起きて」
おばあちゃんの声で私は目を覚ました。
……寝落ちた、のか
「やっぱり疲れてるのね。晩ごはん食べて元気だすのよ。」
「はぁい」
寝ぼけ眼でリビングに向かう。
課題、終わらなかったなぁ。
それにしてもなんか…また夢を見ていた気がする。目が覚めると覚えている夢もあれば覚えていない夢もある。
夢だし、特別珍しくもないけれど…。
「、お隣の実弥くんが果物持ってきてくれたの。食べる?」
「うん」
不死川家は霧雨家によくしてくれる。
今日は桃か。やった。
「桃ってなんで桃色なのかなぁ。」
「まぁ、面白い子ね。」
「桃の色で桃色なんだぞ。」
二人はクスクス笑っていた。
(それは外見でしょう。中身の色は違うじゃん。)
私は初めて二人に腹が立った。
「実弥くん、体育祭の時に話したんだけど何だかのこと心配してたわ。」
「最近大丈夫かって。何かあったら相談してくれていいからな。おじいちゃんたちも心配してるから。お前は大切な孫娘だからな。」
二人はにこにこ笑っている。
……父さん、母さんがいなくなって。
多分皆心配してる。私を。
大丈夫なのに。大丈夫って思っていたのに。その実、大丈夫じゃなくて。欲しくて。欲しくて。父さんと母さんの愛と優しさが。私は。
実弥にはたくさんの心配をかけた。私が望んだことなのに。私が二人を拒んだのに。
「おばあちゃん、おじいちゃん」
私は桃をフォークで刺した。
「私、大丈夫よ。」
笑ってみせた。
笑うことしかできない。
私は前世から、変わらない。