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キメツ学園【鬼滅の刃】

第9章 親友よ


「師範」


声をかけられて驚き振り返った。

夕方。いつもなら任務に備えて休む時間。


「……お酒、ですか」


朱の杯に注がれた液体と、私の脇にある徳利を見て聞いてきた。


「はい。藤の花のお酒です。」


酒に空の夕日が写っていた。
私は夕日をかきけすように杯の酒を一気に飲み干した。


「嫌ですか、私がお酒を飲むのは。」

「……いいえ…。」


継子は私の隣にちょこんと座った。まだ私より小さい。出会った頃よりは大きくなりましたかね。
 

「…酔うことができないんです。私、なかなかの酒豪でしてね。」

「……でも、お酒の匂いがします。」


酒くさいと言いたいらしい。あら、そんなに飲んだでしょうか。


「どうしてお酒なんて飲んでるんですか?」

「………」


私は杯にお酒を注ぎながら答えた。


「…少々……忘れたいことが、ありまして…」


夕日が酒に写る。
綺麗だけど、私は夕日が嫌いです。すぐ夜と鬼を連れてくるんですから。


「酔いはしないのに、記憶には穴が開くんですよ。不思議な飲み物です。」

「…僕のことも忘れるんですか?」

「いいえ、私が忘れたいのは、他の人です」


お酒に口をつける。
あまり美味しくないですね。次はもう少しいいのを買いましょうか。


「君のことは忘れないと……いえ…」

「師範?」


私は継子の頬に手を当てた。
少し撫でるとくすぐったそうにした。

その顔にも声にも、やはり霞がかかっているけれど。温もりは確かにある。


「……きっと忘れてしまいますね。こんなにも…。」


私は笑ったまみその子を抱き締めた。まだすっぽり腕の中に入る。


「師範…?」

「あぁ……忘れてしまいたい。忘れてしまいたいです。あなたのような子を、私はいずれ一人ぼっちに。あなたを忘れれば、楽に死ねますのに。

あの人のことを想うなんて、私は馬鹿です。」


継子をぎゅっと抱き締める。

あの人は今どうしているでしょう。

































きっと、全て忘れて、来世で愛し合うことはないでしょう。

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