第9章 親友よ
髪型に関して友達がたくさん褒めてくれた。けれど照れ臭くて上手に答えられなかった。
部活でもそうだった。
「いいじゃねえか」
「いいと思う」
あぁ!今日も美術部は平和ー!!
落ち着く…ここが一番の居場所…!!
「それはそうと霧雨、特別学級に行ってきてくんねぇか」
「え」
「備品の筆を借りパクされてんだ。頼む。」
「……何で私が…」
「お前副部長だろ」
と、突然言われて私は驚愕した。
「どういうことですかああ!?」
「…俺も初耳だ。」
「副部長決定方法はド派手にあみだくじだ。運命に従え、霧雨。」
伊黒くんは数秒たてば寝返った。
「頑張れ、霧雨」
君にはリレーの恨みもあるし、ぜひいつか復讐させてほしいものだ。
特別学級というと、普通学級で生活するのが難しい生徒がいる。備品の筆を授業で使うからと借りていき、そのまま長いこと返されていないらしい。
中等部卒業という節目にして部長の宇随先輩は備品の整理を始めていた。そこで判明したんだろう。筆が五本なかったらしい。
というかなぜ部長が行かないんだ?
「俺、あそこあんま好きじゃねえし」
とか言いやがって。
「すみません、美術部です。」
こんな放課後に誰かいるのかと不審に思ったが、いた。
教室に置かれた水槽に向かって立つ高等部の人が見えた。あぁ、生き物係とかそういうのかな。金魚にエサをあげているみたい。
「……宇随、ではないのか」
見てわかんねえのかその名前を私の前で出すなああ!!!
と言いたいところだがやめよう。まだ水槽とにらめっこしてるし。
「部長は今忙しいそうなので、私が来ました。」
そこまで言って、その人はようやく私を振り返った。……?目がちょっと、不思議だな?