第50章 本心
「付き合うってこと!」
「突き合う?」
私は突きを繰り出すジェスチャーをして見せたが、カナエはそれを否定した。
「カップルになるってことよ!」
「え、まだ中学生なのに?」
「関係ないわ。好きなら付き合うべきよ。だってそうなったら嬉しいでしょう?」
そう聞かれて私は困った。
「よくわかんない…。ていうか、本心を知ることと…その、告白することに何の関係があるわけ?」
「…って、本当に何かポカリと大きな物をどこかに置いてきたみたいね。」
そう言われても首を傾げるしかなかった。
「まず整理しましょう。は、不死川くんのどんな本心が知りたいの?」
私はうんと悩んで、答えを出した。
「実弥は、私を前に怪我をした時に…何かに怖がっているみたいだった。そう、あれはまるで、トラウマ…。私が転んで怪我したの、人間として死んだ時に欠損していた場所だった。」
「じゃあ不死川くんは、その時のことを思い出していたのね…。」
「そう。でも、前世のせいで、彼を縛り付けるのは嫌だった。そんな風に心配かけて、迷惑かけるのは…。実弥から感じた気配はそれを裏付けるものだった。…でもね、実弥はそのことは関係ないって言っていたの。だから、よくわからなかった。」
私がそう言うとカナエは頭を抱えた。
「あー、ちょっと、話すのがはやいわ。というか、あなた何か勘違いしてないかしら。」
「え?」
「んー、つまり…、…その、は前世の記憶があるから不死川くんが優しく接してくれてると思ってるわけね。」
私は頷いた。
「前世の記憶に引きずられている不死川くんに申し訳ないと。」
また頷く。
カナエは目尻を下げた。
「そんな、あなたって本当に…。ううん、これは本格的に…。」
「え、何?」
「何と言うか…鈍感ね」
「えっ」
カナエが苦笑する。
私はその笑顔の意味がわからず、ただ唖然としていた。