第47章 真冬
前世の記憶に絡めとられているのは私だけじゃない。実弥もだ。
私と同じ痛みを感じている。
何で気づいてあげられなかったのか。
前世で私をみとったのは彼だ。氷雨くんは前世のことが原因で歩けなくなったと言った。
私は平気でも、実弥は。私の死がショックだったと。そう言っていたのに。
「?」
「…荷物」
「は?」
「荷物。返して。」
「おい「自分で帰る。」」
一緒にいてはダメだ。実弥にそんなことをさせたいんじゃない。そんなつもりで『無念です』と言い残した訳じゃない。
違う。違う違う。何もかもが違う。私は、私は私は。
「私は、歩けるんだから。足があるもの。鞄だって持てる。腕があるから。」
だから、だから。
「……」
「……」
「俺はお前が心配なだけだ。そのことは関係ねえよ。」
そう言われたけれど、わからなかった。
「気配と、言ってることがめちゃくちゃだよ。実弥からは、トラウマみたいな、そんな気配がしてる。」
「……俺は…」
「ねぇ、わかんないよ。気配はわかるのに、私、何を信じたらいいのか、わかんないの。」
少しパニックになってしまった私に、実弥はなにも言わなくなった。
知りたい。
気配じゃない、実弥の心が知りたい。
でも私にはそれがわからない。
「…帰んぞ」
実弥が少し先を歩く。私はついていった。鞄は実弥が持ったままだった。
私たちは何も話さず、家についた。