第5章 夢見る
熱で休んだことになっていたらしく皆に心配された。
罪悪感がすごい…。
「おぉ、お前もういいのか」
美術部で宇随先輩にも聞かれた。
伊黒くんは委員会があるらしい。図書委員会だ。
窓際で空をみていた先輩の隣で私も空を見上げた。
「はい、すっかり。先輩次は空の絵ですか?」
「んー、まぁそうだなぁ。」
先輩は指でフレームを作り空にかざした。
「私、空描いてみたいです」
私も真似した。窓の外からこの光景を見た人はどう思うのか。
「派手に偉いなぁ、霧雨は。美術部も吹奏楽部も将棋部も頑張ってよぉ」
「暇…っていうのが嫌なんですよねぇ。吹奏楽部を優先はしていますが、どれか一つを頑張るのは難しいです。全部やりきりたい。」
前世からの癖というか、切羽詰まってるとなんかホッとするのだ。ギリギリだと嬉しい。それだけやることがあるのだから。
「俺は派手にハッキリとやることの順序をつけてる。」
宇随先輩がそう言う。
それと同時に、私の頭に声が響いた。
『俺は派手にハッキリと命の順序を決めている』
ピキ、というようなにぶい痛みが頭に走った。
「美術部が一番だろ、んで吹奏楽部、まぁ勉強は最後だな」
先輩は苦笑いを浮かべた。
私は苦笑いも浮かばなかった。
『霧雨さんよぉ、あんた何考えてんだ』
何?
何?この声。
宇随先輩の声にそっくり。
「全部なんて俺には無理だわ。」
『全部守ろうだなんて無理だろ。』
「順序つけねぇと何もできなくなる」
『順序つけねぇと守れるもんも守れねぇ』
痛い。頭が痛い。
私は空を見上げられなくなった。
「霧雨?どうした?」
『宇随くん』
声?
誰の?
あぁ、私か。