第44章 前世の記憶ー秘密を霞にまいてー
「ふざけてるの?」
安城殿が声を出した。
怒りの気配がしますねえ。また喧嘩なんでしょうか。
「本気だ。鬼の祖である鬼舞辻無惨はその昔、薬を飲んで鬼になった。」
桜くんの告げたことは、ここにいる誰もが知らないことでした。
「そんなの、どこで知ったのよ」
「遥か昔の記録を漁った。産屋敷とは仲良くしておいた方がいいよ。見たい記録とか見せてくれるし。」
桜くんは続ける。
「それで、僕はその薬の材料を知った。」
「…嘘でしょ…?それで鬼になろうっていうの!?」
「ちょっと当たってるけどだいぶ外れてる。そもそも、僕がその薬について調べたのは、逆をつけば鬼を人間に戻す薬ができるんじゃないかと思ったから。」
「…で、結局鬼になる薬ができたと。」
桜くんは首を横に振った。
「どうしても手に入らない材料があった。完全じゃない。」
「何よ、それは。」
「青い彼岸花」
「はあ?」
安城殿が首を傾げる。
まあ、そうですね…。彼岸花は赤いものですから。
「代わりに普通の彼岸花を使った。けれど、これではダメだった。彼岸花の毒を抽出したのだと…。」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。」
安城殿が話を止めた。
「あんた、まさか、人に飲ませたの??」
「死体にね。」
「死体…?」
「病院とか、処刑場とか、いらない死体ってけっこうあるんだぜ。」
私は腰を上げた。
「安城殿」
安城殿が桜くんをなぐりにかかっていたので、止めたまでです。
話を最後まで聞かないと仕方ないのに、これでは先に進みません。
「止めないで!!そいつ、許せないわ!!」
「全部ちゃんと弔ってるよ!責められる義理はないね!!」
「ハカナ、煽るようなことはやめないか!!天晴も下がれ!!」
場の雰囲気は最悪。それに、力だけで私は安城殿にかてないので、少し危うかったが安城殿が下がった。
「ハカナ、話はまだつづくんだね」
「もちろん」
「じゃあ、続けて」
ひとまずその場は氷雨くんがまとめた。私は元の場所に戻り、再び話に聞き入った。