第40章 泥舟
住所を頼りに、二人であの人のもとへ向かった。
かなり遠い場所だった。
長距離を電車で移動することになり、お金がかかるからと実弥にやはり自分一人で行くと言ったのだが、
「この泥舟から降りるつもりはねえよ。」
とか、
「お前のことだから考えなしなんだろうなとは思ってた。」
とか。
まあ、頼りになる素敵な幼なじみを持てて光栄です。オホホホホ。
最寄駅に到着し、徒歩の移動でも私たちはやいやい言い合っていた。
「、本当にこっちかあ?何もねえぞ。」
「ええー、私のスマホはこっちって…。」
「アホ、逆方向じゃねえか!!よく見ろ、貸せッ!!」
こうして、泥舟のオール主導権は実弥に渡った。そこからははやくてすぐについた。
のだが。
「大きな家ばっかだねー」
「高級住宅街なんだろ。」
歩くだけで緊張する。手土産、豪華にした方が良かったかなあ。
「おいぃ、とんでもねえ金持ちだぞこりゃあ。」
実弥が立ち止まる。私たちは生唾を飲んだ。高級住宅街の中にあるとはいえ、この家は異質だった。周りの家の二倍はある。
「……すっげえ…」
思わず実弥がこぼす横で、私は賢明にインターホンを探した。まずもって入り口が広いから、探す範囲も増える。
「あ、あったあ!」
インターホンをみつけ、少し深呼吸してから押そうとした。
が。
「ばあ」
「うおっっおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
突然、門からひょっこりと顔だけが出てきた。
実弥は耳を塞いでいて、呆れたように私を見ていた。
「うふふ、楽しみで思わず出てきてしまいました。ですがあまりにも遅かったものですから、これは一発驚かしたいと思いまして。何かあったんですか?」
「コイツが自信満々に逆方向へ歩いていったので、戻ってくるのに時間がかかりました。」
「さ、実弥ーーー!!!!!」
恥ずかしいことを暴露され、私はまた叫んだ。顔だけをだしたその人は、クスクスと笑った。