第39章 家族
私は二人にお礼を言い、帰っていく煉獄くんを見送った。
「お前、ちったあアイツのこと考えてやれよ」
「え?」
「告白されて断わったんだろ」
…??
なぜそれを。
誰にも言っていないのに。
「そこそこ噂になってるからな。キョトンとすんな、バーカ。」
「いたっ」
おでこにデコピンをくらった。
「いつどこで誰が見てるかわかんねーもんだぜ。見られてたらしいしな。」
「えー、私気づかなかった…。」
「そりゃ、緊張してたんじゃねえのか。お前のことだからリンチされるとか考えてたんだろ。」
全て図星でビックリした。何でわかるんだ。エスパーか。
「煉獄の奴、けっこう傷心みたいだしな。」
「…そうなんだ。」
「そんな時に追いうちをかけるように部屋に連れこむんだからなァ」
「ッ…」
私は拳を握りしめた。一年生の時、色んな人が告白してきた。カナエも言っていたけど、彼らは決して本気で告白しているわけではない。
でも、煉獄くんは違う。
もし私が…実弥に告白して、お前なんて嫌いって言われたらどうだろうか。いや、でも私は煉獄くんに嫌いとか言ってないし…。
「…まあ、考えろや。」
実弥は最後にそう言って帰っていった。
隣の家のドアが閉まっても、私はじっと考えていた。
少し懐かしい感覚。
あの、悲しみの日々。
ネガティブなことを考えてはいけないと思うけれど、私はその考えを振りきれなかった。
私は人に好かれる資格も人を好く資格もない。けれど、私が誰かの優しさや愛にしがみついていたのは…。
あの人は私の家族だった。いとこで、親戚だった。あの人のことはあまり覚えていないけれど。
…この世に存在しているってことだよね。でも、私にいとこがいるなんて聞いたことがない。
…会えるのかな。
会いたい、けど。
そもそもあの箱とボタンは何でよこしてきたんだろう。箱に至っては禁じられた技まで使って。本部にバレたら隊律違反で何らかの処罰を受けることになっただろうに。
(…会わなきゃ)
まるで義務のように思えた。
私はあの人に会って、前世であの人が何を伝えようとしたのか、そして私が何を理解できなかったのかを突き止めないといけない。