第1章 霞
私は目の前の人に自分の日輪刀を差し出した。
愛に溢れた優しい刀鍛冶が打ってくれた刀。
刀鍛冶の里から嫌われ見捨てられていた私の懇願を聞き届けてくれた。継子の刀を打ってくれた。私の刀まで。
『お前さんの刀は俺の誇りや。』
よく言ってくれた。
なら。
その誇りは。
「…私の、刀は、刀鍛冶に…返して…」
咳き込む。血が吐き出される。
「_______________!____!!!」
聞こえないんです。すみません、聞こえないんです。
それを伝える時間さえないんです。
目の前の人が私の刀を握るのを感じた。その瞬間、ありったけの力で刀を握った。
「鬼殺隊、霞柱、霧雨…」
私は今、優しさと愛を知って死ぬ。
教えてくれた人が、三人。
お館様。
刀鍛冶。
継子。
「私の鬼殺の魂は後世に託します。」
私の目から何かが溢れる。液体。
血?
もしかして、涙?
だとしたら、生まれて初めて流れた。
へぇ、これが涙。
もっと冷たいと思ってた。暖かい。
継子のあの子。
この世に残していくのが忍びない。先に逝ってしまう。
まだ柱になるにははやい。まだまだ教えたいのに。これからは君が一人で技を磨いていくんだ。それも大切なことかもしれない。
無責任だ。これはあまりにも無責任だ。
涙が止まらない。止まらない。
目の前の誰かが、私の頬に触れる。暖かい生きた人間の手。冷えきった私の頬とは違う。目尻に触れる。
拭いてくれているのかな、涙。
最後の時間。
正真正銘、最後。
「無念です……………ッ!!!!!!!!!!」
私はそこで終わった。
鬼殺隊一の嫌われ者の私は、終わった。
終わったはずだ。