第1章 霞
あぁ。
死ぬんだろうな、私。
食われて死ぬのかなぁ。
いや…。
朝日が私の体に当たってる。もう鬼も来ない、はず。
もう指一本も動かない。ダメだ、死ぬ。
どうせ死ぬ。死ぬのはわかっている。なら、足掻こうか。
立ち上がってやろう。もう、片足はないけど。
左手もないけど。
右手があれば刀は握れる。
私は嫌われ者だ。私を失って困るものはいないだろう。
けれど、あの子に諦めるなと散々に言ってきたのだから。私も。
最後まで帰るためつとめよう。
この心臓止まるまで。
私は鬼殺隊の霞柱だ。
あぁ。
一人にしてしまう。
まだ。
まだだった。まだはやかった。
まだ一人にしたくない。
支えてあげたい。見守ってあげたい。自分が請け負ったのだから、最後まで。
「______________ッ!!!!!」
…誰だ?
私の目はとっくに見えてはいなかったし、耳もダメになっていた。自分の声は辛うじて聞こえるけれど、他人の声は何も聞き取れない。
気配でその人物が目の前に来たのがわかった。
そうか。烏が援軍を呼んでいた。…って、もう朝。そっか。もうすぐ夜明けだと思ってたらこうなったもんね。
目の前に来られたら動けない。
でも。
もう私は終わるんだろうな。
「…伝える人に…伝えたいことが伝わるようにはなっています。」
誰かはわからないけれど話した。
気配でいるのはわかる。それだけ。
上弦の情報も技も、私の烏が見ていた。技を全部見たところで援軍を呼びに飛んでいったけれど。
あれが最後だったんだな、私の烏とは。嫌われる私の側にずっといてくれた。感謝しかない。烏への遺言も完璧だから大丈夫なはず。