第33章 前世の記憶ー神風鬼殺隊ー
その風を感じた時、私は違和感を覚えた。
私の知る風は、こんなに豪快な風だっただろうか。
「あ?」
ギロリと私を睨みつけてくる。
「はん、遅かったなあ!あんたが来る前に鬼は斬っちまったぜ!!」
ああ、そうです。変わったんですよね。風柱。アイツ、引退してしまったので。
“引退”
それは死ではない。生きたまま鬼殺隊を離脱したということです。
でもどこか寂しさがあります。もう二度と、私はあの風を感じられることは未来永劫なくなってしまったのですから。
「おい!無視かよ!?」
「…あ、すみません。何ですか?ええと…。お館様に怒鳴り散らしていた子ですよね…。」
「う…ッそれを言うな!!」
「すみません。あの時、何の話も聞いていなくて。お名前、何でしたか。」
新しい風柱ということに気を取られ、お館様に怒鳴っていたことくらいしか記憶にないんですよね。
その後、ボーッとしていたら会議終わってたんですけど。内容もいつもと変わりばえしませんでしたし。
「不死川実弥だ!!覚えろ!!」
「はあ、そうですか。」
私がそう言うと、その時共に鬼を追いかけていた行冥がやってきました。
任務先でたまたま会って、話していたら鬼の気配を察知してここまで駆けつけたんでした。
私の追いかけた鬼は不死川くんに斬られていたわけですが。
「あら、そちらは終わった?」
「ああ…。それより不死川、相変わらず口のきき方とい言うものを知らないようだな。」
まあ珍しい。ここまで怒るのもなかなかないような。
不死川くんは音もなくぬっと現れた行冥に驚いているようでした。
「いいんですよ。言わせておけばよろしいでしょう。」
「お館様と同じようなことを言うんだな…。」
あら。そんなことおっしゃってたんでしょうか。
なんて言えば怒りの矛先は私に向くでしょうね。いけない。柱のまとめ役を請け負っているのだから、しっかり話は聞かなくては。
けれど、仲間が消え去ることにはいつまでたっても慣れませんね。
「同じ柱なんですから。」
「頂点に君臨するお前がそうでは隊に乱れが生じる。この前の会議の件も、お前が不死川に言い聞かせなくてはならなかった。それなのに急ぎの用もないのに誰よりもはやくに帰ってしまって…。ああ、嘆かわしい。」