第4章 煌めき
顔の傷は増えなかった。
良かった。周りに何も言われない。
文化祭は二日間。つまり、今日で終わる。私は文化祭の目玉の吹奏楽部の演奏を聞きに行った。友達はもっと前がいい!と言った。私は全体をみたかったので断った。
『こんにちは!吹奏楽部です!!』
部長の挨拶が始まる。なかなか面白い。私も笑った。
「良い演出だな」
「伊黒くん」
声をかけられて振り向いた。
「…何か…久しぶり?」
「あぁ、今初めて文化祭に来た。」
……彼らしいかも。
演奏が始まる。有名なポップス。今流行ってるアニメの曲。なかなか盛り上がる。全然顔を出していなかったので何の曲をやっていたのか知らなかった。
曲の盛り上がる部分で、トロンボーンの誰かが立った。
実弥だ。
「む、不死川か。」
伊黒くんも気づいた。
ソロだ。
スライドを素早く動かし、見事に吹ききって見せた。
実弥がお辞儀をする。
「なかなか」
伊黒くんが拍手。私も。というか、周りの人が皆そうしていた。
吹奏楽部のステージが終わった。
「霧雨」
伊黒くんが私の制服を引っ張った。
「ちょっと…来い」
文化祭中の美術室に人はいない。
何のようかと思っていると、伊黒くんにハンカチを差し出された。
「…何?」
「…泣きそうな顔をしている。」
「………?」
私は美術室に写る私の顔を見た。
笑顔じゃない。
へぇ、何だ。
こんな顔できたの、私。
「……大丈夫か?ずっと辛そうだった。その頬はどうした。」
伊黒くんは心配してる。
私はまばたきをした。ポロポロと涙がこぼれた。
あの夢以来の涙だ。