第28章 絆
カフェでコーヒーやジュースを注文し、席に座って届いた飲み物を飲みながら四人で話す。
大人なカフェだ。私じゃ絶対こんなところには来ない。
私は天晴先輩の隣に座って、向かいには冨岡くん。天晴先輩の向かいに実弥が座った。
「……学園祭の日はごめんなさい。私のせいで、二人が…。喧嘩をしてしまったと聞いて、本当に反省したわ。」
天晴先輩がうつむいて言う。
「私……霧雨ちゃんにまた会えて本当に嬉しかったの。だから舞い上がっていたのよ。自分のことばかり考えてしまったわ。」
「そんな…うっとうしく付きまとったのは私です。それに、喧嘩だって…。」
最後に叫んだあの言葉がダメだったのだ。
「…ごめん、実弥。ひどいこと言っちゃった。」
ついポロッと下の名前で呼んでしまった。
が、怒る雰囲気もなく。
「いや…俺も噂に振り回されて……悪いこと言った。」
久しぶりに会話が成立した。
「すみませんでした。」
実弥が天晴先輩に謝った。
先輩は微笑む。
「いいえ。私も…私も噂されるような態度をとっていたんだもの。」
冨岡くんに視線を向けていた。
少し目を伏せて、また発言した。
「霧雨ちゃんは優しい子なの。」
私はドキリとした。
「……私の、大切な友達…」
「先輩…」
「だから、私、あの時あなたを守ったのよ。」
先輩がにっこりと笑った。
「悲しいのは、あなたにとっても私が大切な存在だったから。」
私はハッとした。
前世での最後の言葉だ。
安城殿は、自分の死が私の父親の死と変わらないと言った。父親の死は悲しくも何ともなかったのに。
なぜ安城殿の死はこんなにも悲しいのかと、私は最後に尋ねた。その言葉はきっと届いていないと思っていた。
「…ねぇ、実弥。冨岡くん。天晴先輩、すごく優しい人なの。」
私は改めて二人に言った。
「そのことをわかってほしいんだ。だから…話しても良いかな。」
二人は黙ってうなずいた。
天晴先輩はただ優しく微笑んでいた。