第25章 苦手人
筋肉痛だ。
私は魂が抜けそうなほど今日はやる気がなかった。
美術部なのだけれど、昨日の煉獄家でのお遊びのせいで筋肉痛がひどい。
「今日は二人とも顔色が悪いな」
伊黒くんに言われてしまった。
これには二人で苦笑した。
「あまり無茶をするなよ」
伊黒くんが肩を叩いて私を励ます。
あぁ、情けない。こんなことで筋肉痛だなんて!!
伊黒くんにこんな同情されるなんてー!!
といった感じで美術室はいつも通り平凡だった。
しかし。平凡はいつも簡単に終わってしまう。
美術室の扉が勢いよくスパアン!!!と開け放たれる。驚いて私達三人は入り口のドアを振り返った。
「美術部!予算案とっとと出しなさいよ!!」
「げ」
「げじゃないわよ!!私が怒られるのよ!!」
私と伊黒くんは固まった。
多分、固まった理由は違うだろう。
まさかの、前世での知り合いがそこにいた。
ええええええぇぇぇぇぇ…!?嘘でしょ!?
宇随先輩と予算案とやらについてギャンギャン言い合っているその相手。
「………三美女、だ」
「え!?」
「高、等部、三年の」
「ええ!?」
……か、かの…かの有名な高等部学園三大美女の一人がこの人!?高等部で三美女のなかでも絶世の美女と言われている人。
はっ、私も三美女だって言われてるんだっけ!?カナエにこの人に私!?選んだ奴誰だ出てこい。なぜこのラインナップに私を入れた。
ていうか、美しいことは認めるけど…よくこのひと三美“女”に選ばれたなぁ…??
「…伊黒くん?」
「……」
「どうかしたの?」
今度は彼の顔色が悪くなってしまった。顔がつけているマスクのように白い。
「ほーら!あんたが予算案出さないから部員たちも呆れてるじゃない!」
「いや急に来るからだろ!?」
「お黙り!予算案も出さないなら新入生もいないし、廃部になっちゃうわよ!?」
「書く」
「三秒でお書きなさい!!」
やっと静かになった。
「ごめんなさいね~。私、生徒会で会計だからこういうことしなくちゃいけないの!」
と、私達の方をみて微笑んでくる。
当然、目が合うわけで。