第23章 面影
「では、こちらを」
千寿郎くんから渡されたのは剣道で使うしないではなく、前世で訓練や手合わせの際に使用していた木刀だった。
「ありがとう」
今すぐ帰りたい。そもそも?私はインドアなんだ。家で本読むのが好きなんだよくそやろう。何が嬉しくて真夏に動き回るんだ。
木刀を受け取り、宇随くんと対峙する。
「あんたとは初めてだなぁ…」
「……」
嫌だ、本当に帰りたい。
「それでは、時間制限は五分です。呼吸の使用は認めます。」
千寿郎くんの説明にお互い頷き合う。
…まじで始まるのか。おぉ、まじか。
「それでは、始めッ!!」
始まっちゃったあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
なんて言ってる間に宇随先輩視界から消えたし。
「…っ!?、何でかまえないの…!?」
カナエの戸惑いの声が聞こえる。
……きてる。後ろから
「おらぁッ!!!」
ひょい、とかわす。目の前で宇随くんが蛙のように地面に張り付き、飛ぶように起き上がった。
「音の呼吸、壱ノ型ッ!!!轟ッ!!!!!」
どこを狙ってくるのか明確にわかる。私はまたかわした。
「っ、ちょこまかと!!」
「……」
……どうしよう。
やっぱり柱ってやりにくい。隙があんまりない。でも本気だして乗り気なんだなって思われるの嫌だから、サクッと終わらせたいし…。
制限時間五分だっけ。
よし、五分間逃げまわるか。
戦方が定まったところで、私は宇随くんが木刀をいつの間にか二本持っていることに気づいた。
(…実弥の木刀とったのね)
何となく気配で察した。
確かに彼の日輪刀は二つで一つだったし、その方がやりやすいんでしょうね。
「逃げてねえで責めてこいよ!!」
「…じゃあ責める隙くださいよ」
……参ったな。
どうしようかな。
………。