第22章 前世の記憶ー蝶と鬼の戯れー
しのぶが小指を私に差し出した。
「意外にも寂しがりやなんですねぇ?約束しますよ。」
笑っていたけど笑っていない。
「「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーら」」
私はとっさに歌詞を変えた。
「はーりせーんぼーんわーたしーがのーみましょう、ゆーびきった。」
そのことにしのぶは驚いていた。
「それじゃあ、全ての罰は霧雨さんに行ってしまいますよ。」
「……いいんだよ。」
もう償えない罪を犯しているんだから。
「……生きてね、しのぶ。」
私達の会話はそれが最後だった。
無限城で、会うこともなく。
「カアアアーーーーーッ死亡!!胡蝶シノブ死亡!!上弦ノ弐ト格闘ノ末死亡ーーーーーッ!!!」
蝶々が堕ちていくような。
胡蝶カナエが死んだときと、同じような。
ゆびきりげんまん
うそついたら
はりせんぼんわたしがのみましょう
ゆびきった
針千本飲んだとて、私は死ねないのに。
ゆびきりげんまん
うそついたら
はりせんぼんのます
ゆびきった
だって、針千本飲むあなたはいない。
ゆびきりげんまん
うそついたら
はりせんぼんわたしがのみましょう
ゆびきった
嘘つきは、どっち?
約束を破ったしのぶ?それとも、果たされることのない約束をした私?
戯れ、戯れ。
ただのお遊び。
針千本なんて、飲みません。飲めません。
針千本なんて、どこにもありません。
戯れ、戯れ。
ただのお遊び。
例えそれが、あなたに生きていてほしかったという、淡い望みであったとしても。