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キメツ学園【鬼滅の刃】

第19章 別れ


私たちはあてもなく歩いていた。


『師範』


無一郎くんが私を呼んだ。


『どうしました?』

『……師範』

『はい、ここにいますよ?』


私は微笑んだ。


『師範、俺は師範の継子になれて幸せでした。』

『私も君の師範でいられて幸せでしたよ。』


無一郎くんは嬉しそうに笑った。


『師範、俺ずっと一緒にいたいです。もっと色んなこと教えてください。』

『……』


とても素敵なことだ。

けど。私。


私は首を横に振った。


『ごめんね、私…帰らないといけないの。』

『…帰る?』

『君にも、帰る場所はあるよね?』


ここにいる私は、現世の私。

だから、ここで会った君は。現世で生きている君。


『……はい。』

『…帰ろうか。』

『でも、師範。』


私は彼を安心させるために、目一杯笑った。


『もう置いていかないから。』

『…師範』

『ごめんね。一人にして。ごめんね。』


私は彼を抱き締めた。


『……偉いね。よく頑張ったね…。』

『師範』

『どこにいても想ってるよ。忘れないよ。愛してるよ。』


そう言いながら私は彼から体を離した。離したというより、見えない引力に引き離されたような感覚。


あの殺伐とした時代。私たちのなかにあったのは、親愛。

親子のような、愛。


私は無一郎くんを愛している。彼との二ヶ月は愛に溢れていた。まるで我が子のように、この子が愛しかった。


『俺も』


無一郎くんの体が離れていく。


『愛してます。』


離れていくと同時に、霞にかかったように姿が見えなくなってしまった。


『俺を愛してくれてありがとう、師範…』


その言葉を聞き届け、私の意識は落ちてしまった。
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