第14章 追撃す
目を覚ました。
いや…覚ましていない。
これは、夢?
この令和の時代にこんな建物あり得ない。そう、まるで、これは。大正時代。
「目が覚めたか」
目付きの悪い少年が私に話しかける。いつからいたのだろう。というか。
「動くな。まぁ動けないが。」
「………」
関節を動かす度にギシギシと音がする。
……いえ。
動かす関節もありませんが。
右足と、左手とが欠損していて、右手と左足…そして胴体と顔しかないんですから。
「……よく私の死体を取り戻すことができました。まぁあなたの血鬼術なら当然ですね。」
「何だ、もう話せるのか。」
「……。」
私は右手だけで起き上がった。
「あなたと同じ存在ですから。」
「……。」
彼は不満そうだ。
「このことが鬼殺隊にバレて刺されたあとに上弦と遭遇なんて不幸はお前だけだ。よかったな。」
「えぇ、本当に。」
皮肉を込めて私は答えた。
「生き返るだなんて。」
「お前が望んだことだろう。」
「そうなんだけどね。」
私は笑っていなかった。
笑い方さえその時にはわからなかった。
もう笑う必要もないからだ。周囲に気を使って敬語で話す必要もなくなった。
「あの人はいないの?」
「いらっしゃる。足音がする。もう来る。」
そう彼は豪語するが、私には聞こえなかった。でも気配はわかる。
そう、鬼の気配が。
「……目覚めたのですね。」
「おかげさまで。」
大変美しく、綺麗な女の鬼だった。物腰柔らかく体は華奢。声も素敵。
「…すみません、現場を必死に探したのですが……刀だけはどうしても見つけることができませんでした。」
「刀はもう良い。体だけでも取り返していただいて、感謝している。」
「……申し訳ございません。そのようなお姿に……。手と足は戻ります、時間はかかるでしょうが…ええきっと、明日にでも。」
その人は涙声で言った。
実際、全て元に戻った。
ただ唯一、死した時全く機能しなかった視力と聴力は会話できるほどにうっすらと回復したが、生前に比べて機能が落ちていて、二度とは戻らなかった。