第14章 追撃す
あれは果たして冨岡くんだったのか。
わからない。
私にはわからない。
死んでしまったんだもの。
確かめようがないのです。
私、それでいいと思うんです。
「実弥」
河川敷に私たちは随分と長いこと座っていた。小学生の男の子達がいなくなっても。
「前世の私と今の私って、同じようで…全く別人だよね。」
今となっては、前世の私の記憶も曖昧で。
「だからね、私は…私のやりたいことをやる。過去の私はもう…関係、ないから。」
本当はこんなこと言いたくない。関係なかったことにしたくない。
でも。
「……それで、いいかな」
私は今にも泣きそうだった。
実弥はいつものすました顔で私をじっと見ていた。
「…俺は」
今度は彼が話し出した。
「俺は過去も何もかも抱えていきたいね。忘れろって言われて忘れられねぇ。でもお前もそうしろなんて言わねえよ。」
「…うん。」
「過去を抱えて俺は今生を生きる。……は…。」
ちらりと実弥が私を見る。
「生きるよ。私、過去は過去。今は今として生きる。死んだ私がどうしたかったとか、死んだ私に失礼とか、もう考えない。私は今、この人生でやりたいことをやって生きる。そして死ぬ。」
私達は誓いあうように言葉を口にした。
実弥は一瞬目を閉じた。けれど、すぐに目を開けた。多分、実弥は風が好きなんだと思う。目を閉じると風が気持ちいいって知ってるんだ。
「っし!!!帰るかッ!!」
突然大きな声を出されて驚いた。気づけばもう夕日が落ちかけていた。
夕方。前世の私はこの時間帯が嫌いだった。……お酒飲んでたら一瞬で過ぎていく気がしたから、この時間帯ぐびぐび飲んでたなぁ。仕事前に…って今思えば最低だな。
「おら、夜になったらまた心配かけんぞ」
「…そうだね」
私は実弥に追い付きその横を歩いた。
「ねーねー、宿題何でた?」
「あァ?今週は特にねぇよ。ラッキーだったな。」
「やったー」
「つか、来んのかよ」
「明日行ってみようかな…。保健室からでいいって言ってもらえたし~。」
実弥が前を向きながらぶっきらぼうにそうかと言った。でもちょっと笑ってる気がして。
指摘したら、うるせぇと言われたのでムカついた。そっちこそうるせーよバーカバーカ。