第16章 Real love
「私熱ある?」
「あぁ。かなり高そうだが、平気なのか?」
「うん、まぁ」
最近は寝起きの発熱が当たり前で、なんとも思わなかった。
とりあえず熱冷ましを飲みたくて鶴丸から離れようとしたのだけど、
「逃げるのか?」
少し悲しそうな目。
「熱冷ましを…」
「そうか」
私を抱き上げて、机の上に置いておいた解熱剤を掴んで厨に向かう。
「あの、鶴さん?」
「すまん、一瞬も離したくない」
厨で薬を飲む間も抱き上げられたままで、またそのまま審神者部屋まで戻った。
「なぁ、出陣計画、いじってくれるか?」
「…うん」
それが鶴丸の望みなら。
言われた通り大般若は無双になっていた。
言われた通り鶴丸は私を離さなかった。
そして鶴丸は、今日の近侍である山姥切に話をつけ、部隊の役を替えさせた上に、近侍として今日はひとりで出陣報告を受けておけと指示を出していた。
「なぜあんたは鶴丸に抱えられてるんだ?」
「それはな、俺が慧を離したくないからだ。驚いたか」
私に聞かれたはずなのに鶴丸が答える。
そしてまた審神者部屋に戻ると、
「明日の出陣計画だけはもう立てろ」
そう言って私を膝の上に座らせて仕事を始めさせた。
大人しく鶴丸の指示に従いながら明日の出陣計画と、内番を決め、それをあとで山姥切にやってもらう予定の報告書と共にまとめて置いておいた。
その後向かったのは三日月の部屋で。
出陣準備をしている三日月に、
「慧の記憶が戻った。今日は一日中俺が囲うから慧の気が溢れた分は頼んだ」
有無を言わせない宣言。
三日月も予想していたのか、
「あいわかった」
とだけ返した。
三日月の部屋を出ると向かったのは私の寝室。
部屋に入り、鍵を掛け、私を抱えたままベッドに座った鶴丸は、
「さぁこれでふたりだけの空間が出来上がったはずだ」
言って私を押し倒しキスを始める。
いつか手入部屋の前で口づけられたときのような、そんなキス。
私の身体に少し体重をかけ、頭を抱いて逃げられないように。
「はぁ、ぁっ、鶴、さ…」
「どした?」
「また、酸欠、なっちゃ、ぅ」
鶴丸の浴衣を引っ張り訴える。
「ははっ、大丈夫だろう?あのころよりは余裕を感じる」
そう言ってまた口づけ、本当に何分、何十分とそれが続いた。