第14章 Additional Times
清光の掌が優しく私を撫でる。
その温もりにまた涙が滲んでくる。
「慧ちゃん…」
「私は、どうしたらいいの?」
頭がうまく回らない。
三日月たちは私を叱るどころか謝罪してきた。
「慧ちゃんはここに居てくれたらいい」
私の頬を撫で顔を近づけてくる。
思わず息を止めた私に、
「ごめん、怖いよね」
気づいた清光が手を離した。そして、
「今日はどのくらい居られるの?」
聞いてきたから、
「何もしなくて丸3日」
答えると、
「またそんなに時間とれたんだ」
力なく、だけど少し安心したように微笑んでくれた。
「…ねぇ慧ちゃん、もう一度やり直さない?」
見つめている緋い瞳が揺れる。
「俺は初期刀だよ?俺だけは俺の意思で慧ちゃんの気持ちに応えてもいいんだって。それにどんなにしても慧ちゃんの力は狂わない。だだ漏れになってもただみんな素直になるだけだって」
「…なんで?」
判らなくて問うと、
「慧ちゃんが俺のこといちばん好きでいてくれるから」
清光は言い切った。
「前に俺が、愛してるってみんなの前で言ってって言ったでしょ?」
…たしか、初めてみんなでお酒を呑んだときだ。
感情の籠らない声で、キヨミツアイシテル、と言った記憶がある。
「あの言い方でも言霊になっちゃったんだ」
だから私は清光を愛していると?
そんな言葉とか言霊とかじゃない。
私は心の底から清光を愛している。
「慧ちゃんにとって俺がいちばんの契約、あれで結んじゃったんだって」
ごめんね、と清光がまた謝った。
首を横に振ると、
「だから慧ちゃんをいちばん愛せるのも誰より守れるのも俺だけなの」
言い切ってくれる。
そして、
「お願い。やり直してほしい」
そう言って見つめると私の唇に口づけた。
「…清光」
「慧ちゃん、俺を愛してる?」
「…愛してる」
聞かれて今度はするりと言葉になった。
私の意志が言霊に追い付いて馴染んだ、そんな感じだった。
「俺も、慧ちゃんを愛してる」
言ってまた唇が触れ合う。
「俺、慧ちゃんの初期刀になれてよかった」
そういう清光の目は泣きすぎて腫れている。
思わず手を伸ばしそこに触れた。