第1章 プロローグ
「あーるじ、待ってたよ!おはよー」
浴衣姿の清光が飛び出してきて私に抱きついた。
「おはよう清光」
今日もかわいいなぁ、なんて思いながら頭を撫で、玄関を上がると背中側から私に抱きついたまま清光が歩を進めて、促されるまま私もそれに合わせて前に進んだ。
「ねーねー、主はもうご飯食べた?2日も会えなかったんだよ?今日は長くいられるの?俺のこと愛してくれてる?」
なんて耳元で優しく聞いてくる。だから、
「今朝は光忠のご飯が食べたかったからまだ。今日は割と遅くまで居られるはず。あと、清光…」
そっと回されてる清光の腕を避けて振り返ると、
「そういうことは聞かない言わせない!何度教えた?」
「…だって。俺は主のこと…あっ、愛して、る、し」
俺にも言って欲しい、と頬を赤らめた。
「そう。それが先だよね?」
宥めるように言ってくるりと向きを変え、広間の方に歩きだすと、また後ろからガバッと清光が抱きついてくる。
「ねぇ、俺はちゃんと言ったよ?主ぃ…」
ぎゅうぎゅうと力を込めてくる清光に、
「大好きだよ、清光」
彼にしか聞こえないほどの小さな声。
それを無事受け取ってくれたのか、更に強く抱き締めて来た。
そして、
「主、心臓はやい。耳、熱いよ?」
「そりゃそうよ」
こんな、かわいくて綺麗な男の子に抱き締められて、愛してる?なんて聞かれたら身体中の血液が全速力で巡り始めるに決まってる。
「主、肌キレイになったね」
頬にまで熱が集まりかけた私に、追い討ちを掛けるような清光の声。
「…まぁ、そうかもね」
なんとなく自分でも気づいていたそれを指摘され、また耳に熱を持つ。
そうこうしながら押し歩かれていた私は広間へとたどり着き、そこでまた、
「おはよう」
と少し大きめな声を出した。
「おはよう。主さん」
朝食の準備をしていたのだろう、堀川が手を止めて笑顔を向けてくれる。
「清光さんまた抱きついてるの?」
なんて呆れながら。
「主今日朝ご飯食べるってー」
清光が抱きつくことをやめることなく言うと、
「オーケー。すぐに用意するね!」
厨の方から光忠の声が届いた。
「また朝食抜きで来たんですか?」
「だって、自分の作ったものとかもう飽きたし」
「でも自分以外には食べさせるとか矛盾してますよね」
堀川が笑った。