第11章 Nameless fighter
「あぁよかった。無事に君を快楽に溺れさせることができたみたいだね」
安心したような声を出して私の身体を抱き締める。
なんだか先ほどまではなかった優しさが垣間見えて、不思議がっていると、
「僕には主の心を乱さずに気持ちよくさせるっていう目的があったからね。なんだか酷い抱き方になってしまって悪かったよ」
ひょっとして私が最中に余計なことを考えてしまわないように、あれだけの言葉を並べていたのだろうか?
「にっかりさん?」
「気持ち、よかったかい?」
「…はぃ」
「なら僕は満足だよ。さぁ、少し眠りなよ」
真相は判らないまま私は促され、真新しいベッドの中で眠りについた。
心地の良い眠りから覚めると、太陽が真上よりは少し傾いていた。
そして隣にはキレイな寝顔のにっかりがいて。
散らばった濃いグリーンの長い髪の毛が気になって思わず手を伸ばすと、瞬間その手首を掴まれた。
「そんなに僕に興味があるのかい?」
「あ、ごめんなさい」
手をひっこめようとしたが離してくれない。
そしてガンガンと痛む頭。
にっかりも私を思っていてくれたということだろうか?
「この布団はとてもよく眠れるね」
「ほんとですね。私も寝すぎてしまったよう、で」
頭痛に耐えながらにっかりに答えると、
「せっかくだから僕は主と風呂に入りたいのだけど、ひょっとして頭が痛いのだったら三日月宗近さんを呼んだ方がいいのかな?」
頭が痛いのはバレているようだ。
「にっかりさん、あのね…」
言った私に、
「あぁ、そうだったね。口づけをすればしばらく落ち着くのだったね。僕の力を分ける、というのでいいのかな?」
そう言って私に口づけた。
私の感情を落ち着けるように流れ込むにっかりの力。
舌を絡めながらも優しい口づけ。
「お風呂、行けそうかい?」
そう云われて素直に頷く。
「主と以前一緒に入ってから僕はまたこういった日が来るのをずっと待っていたんだよ」
言いながら風呂場のドアを開けると、
「やっと来たのか?待ちくたびれたぞ」
「このような部屋があったなんて、全く知りませんでしたね」
あまり広くはない風呂の中にふたつのひと影。
「三日月宗近さん、小狐丸さん、いつの間に?」
「気持ちよさそうに寝ていたからな。声は掛けずにいたのだ」
にっかりの顔が歪む。