銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第11章 侵攻前の作戦会議
『やっと終わったー。あー頭使いすぎた!糖分とろ。』
ゴク。とジュースを1口飲むと、細い息を吐いて背もたれに身を預ける。
「よ。おつかれ。」
そう言って声をかけてきたのは午前中の防衛任務を共にした出水だった。
『おつかれー。公平。』
出水はジュースを買って海影の隣に座る。
「今日の会議。大規模侵攻の事だったのか?」
『うん。今回はたぶん4年半前より規模が大きいし、ブラックトリガーを持った人型が来るよ。』
「ブラックトリガー....!?は?マジかよ。」
『確実にとは言えない。でも確率は高い。』
普段なら笑っている海影の顔が少し強ばる。
『ねぇ。公平、お願い聞いてくれる?幼馴染でもあり、1番の友達の公平に頼たいことなんだけど。』
「ん?何だよ。」
『今回の侵攻、迅の話だとC級隊員達と修達が危ないらしいの。だから、お願い。私じゃ多分全員はカバーしきれないから。守ってあげて。』
貼り付けたような笑みで笑う海影
それを見た出水は心底呆れた。
理由は簡単だ。
海影が貼り付けた笑顔を浮かべる時は何かを隠している証拠だからだ。
しかし、聞いたところで教えてくれる訳がない。
全部1人で背負い込み、頼ることなんて絶対にしない。
そんな海影に出水は悔しさとやるせなさが込み上げて来る。
「いいぜ。わかった。」
『ありがとう。頼んだよ。』
「その代わり!」
『へ!?』
「今度食堂のエビフライ定食奢れよ!
次いでにコロッケも!」
『...わかった。可愛い後輩のためだ!
払ってあげようじゃん!』
「そう来なくっちゃな!それともう1つ。絶対無茶すんなよ。」
『...いいよ。約束ね。』
出水はぐっと感情を押え、笑って小指を差し出す海影と指を絡め合い誓いを立てる。
しかしその顔は悲哀の色を浮かべていた。
『ん?どうしたの?公平。...って!あああ!!
やばい!これから鬼怒田さんと冬島さんと会議あるんだった!!じゃあ、私もう行くね!』
「お、おう。気をつけてなー」
バイバーイと手を振り去っていく海影に出水も手を振り返しながら見送る。
そして姿が見えなくなると力なく手をさげ呟いた。
「このっ...世話バカが...」
悔しそうな声に乗せられた言葉は誰の耳にも届くことはなくただその場に小さく木霊するだけだった。