銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第8章 ブラックトリガー争奪戦
【目標まで残り1000】
月明かりと街灯の光しかない夜に8つの影が捨てられた民家を駆け抜ける。
「おいおい三輪。もっとゆっくり走ってくれよ。疲れちゃうぜ。」
そう言って先頭を走る三輪に話しかけるのが太刀川隊隊長太刀川慶。
彼はボーダーにおいてアタッカー1位の実力を持ち、迅のライバルだった男だ。
「(やっぱり、この人は苦手だ)」
自分の後ろを走る太刀川に視線を向けながら三輪はそうおもう。
【目標まで残り500】
玉狛までの距離を伝えられた瞬間だった。
「止まれ!!」
太刀川の一言にその場の全員が足を止めた。
目線の先には行く手を阻むように立ち塞がる迅の姿がある。
「太刀川さん。久しぶり。みんなお揃いでどちらまで?」
「うおっ。迅さんじゃん!何で?」
そう真っ先に問いかけたのが当馬
「よう当馬。冬島さんはどうした?」
鎌をかけるように迅は当馬に問いかける。
すると当馬は少し声を弾ませて答えた。
「うちの隊長は船酔いでダウンしてるよ」
「余計なことをしゃべるな当馬」
テンションの上がっている当馬を咎めるように風間がギロリと睨む。
「こんな所で待ち構えてたってことは、俺たちの目的もわかってるわけだな。」
「うちの隊員にちょっかいに出しに来たんだろ?最近うちの後輩たちはかなりいい感じだからジャマしないでほしいんだけど。」
「無理だ......と言ったら?」
太刀川はまるで煽るように迅を見て笑う。
「その場合は仕方ない。実力派エリートとしてかわいい後輩を守んなきゃな」
ポンっ。と風刃に手をおき、迅は全員に鋭い目を向ける。
その刹那三輪は臨戦態勢をとり、太刀川は嬉しそうに笑みを深めた。
「なんだ迅。いつになくやる気だな。」
「おいおいどーなってんだ?迅さんと戦う流れ?」
「《模擬戦を除くボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる》隊務規定違反で厳罰を受ける覚悟があるんだろうな?迅。」
「それを言うならうちの後輩だって立派なボーダー隊員だよ。あんたらがやろうとしていることもルール違反だろ。風間さん?」
確信をつくような迅の言葉に風間は何も言えず迅を睨む。