銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第16章 ガロプラと小さな傀儡
「海影!大丈夫か!?しっかりしろ」
大きな瓦礫の山の中に潰されている海影を急いで到着した迅が救出する。
『ッ!』
「おっと!」
ガシュッ!!
大きな瓦礫の下から抜けた海影は携帯していたナイフを迅に向けるが迅はそれを手が傷つくのも気にせず刃を握った。
「海影。安心しろ。お前の味方だ。」
『迅?』
「!そうだ。俺だ。記憶が戻ったんだな!」
『ねぇ...."みんな"はどこ?ここはどこ?何で私生きてるの....』
「(コイツ記憶が混濁してるんだ....!)みんなはもう....海影。投降しろ。俺たちはお前の味方だ。もういい。もういいんだ。お前は帰ってきたんだよ。ここに。俺たちの居場所に。」
帰ってきた?
違う。私の故郷はアフト────
ビキビキビキッ!!
また何かが私の中を侵食する。
左目が熱い痛い熱い!
熱を帯びる左目に未だ聞こえるハイレインの声
侵食される思考
うるさい熱い嫌だ
誰が誰が助けて....!
『ああぁぁぁッ!!』
「海影!その眼」
『メーレイ...命令...は絶対遂行...』
「海影!戻ってこい!!」
『離せっ!命令を遂行しないと命令を!命令を!!』
「もうやめろ!辞めるんだ海影。どの道その傷じゃもう俺とは戦えない。トリオンだってもうないんだろ?無駄な抵抗はしないでくれ....頼む海影。お前を失う訳には行かないんだ。」
お前を失うだけで、未来は大きく変わってしまう。
それだけお前の影響力があるんだ。
だからどうか投降してくれ。
「頼むよ。海影」
『...ッ!』
「海影?」
『ねえ、迅...もう...誰も傷つけたくない...私を...殺し、て?』
『!海影!それは...』
『そう、だよね...むり、だよね。だから...こうする。』
海影はそう言って笑うと持っていたナイフを自分に向け、胸を思いっきり突き刺した。
「海影───!」
『これ、で...い、い。』
これでもうハイレインの命令は聞けない。
これでもう誰も傷つけなくて済む。
やっと...やっとこれで開放される。
ガクッと全身から力が抜けると、そのまま光を失った海影のラピスラズリの淡い瞳にゆっくりと蓋をされていく。
その蓋が最後まで閉じられた時、細い蜘蛛の糸だった御影の意識はプツリと音を立てて切れ、深い深い無意識の海へと沈んで行くのだった。