銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第15章 絶望の足音
「確かに隠密任務という事は考えられるな。ガロプラもロドクルーンもデータではそこまで大きな国じゃない。エネドラへの聞き取りは続けるとして、ガロプラとロドクルーンがこちらの世界を離れるまでは、特別迎撃体制を敷いていくことになる。
その内容についてはこれから協議して行く訳だが、その前に城戸司令よりひとつ指示がある。」
そう言い切ると、その場の全員が中央に座る城戸に視線を向けた。
城戸は短い息を吐いたあと、ゆっくりと話し始めた。
「今回の作戦は可能な限り対外秘として行うものとする。」
「対外秘?市民には知らせないということですか?」
対外秘という言葉に反応した嵐山が城戸に問いかける。
城戸は嵐山の方を見て頷くと「そうだ。」と冷静に答えた。
「大規模侵攻や四塚市の騒動からまだ日も浅い。この短期間に三度侵攻されるとなれば、市民の動揺が増大する可能性がある。そうなれば現在進行中の遠征、奪還計画に支障が出なとも限らない。
当然敵の出方次第にもよるが、今度ばかりは市民には襲撃があったことを気づかせない方がいい。」
「気づかせないのレベルだとボーダー内にも情報統制が必要になりますが。」
風間はそこまで言うと指示を仰ぐように忍田に視線を向ける。
忍田はその意図をくみ取ったのか、コクと頷き言葉を続けた。
「その通りだ。B級以上必要最低限の人員にのみ伝える。それ以外は普段通りに回してもらう。防衛任務もランク戦も平常運転だ。」
「こりゃ大変だな。迅の予知がなきゃなかなかハードだ。」
そう言いながらもニヤリと太刀川は笑う。
「人死が出ないっぽい分気分は楽でしょ。」
「敵の目的が分からない以上厄介だがな。」
「まぁ、この手の情報収集はだいたい海影のサイドエフェクトに頼りっぱなしだったからな。」
明るくは振舞っているが東の顔はどこか少し強ばっている。
しかし、それは東だけではなくその場の全員が何も言えないのか黙り込んでしまった。