第72章 mew
「あっ…はい!口寄せの術の契…」
「口寄せじゃと?そちが?ワシと?…兄上、一体どういうことなのじゃ。」
猫バアといい、この女性といい、人の話を最後まで聞くということを知らないのだろうか。
さきはムッと口を尖らせて、言いかけていた台詞をグッと飲みこんだ。
(というか、「ワシと」って…どういうこと?)
それはまるで彼女が忍猫であるかのような口ぶりだ。
自分の目の前にいるのは猫ではなく、どこからどう見ても人間だというのに、一体どういうことなのか。
「どういうことも何も、忍猫と契約したいというので、お前を紹介しようと思い立っただけにゃ。」
「じゃからと言って何故ワシになるのじゃ!ワシはもう誰にもつく気はのうなったと言った筈。
それに、よりにもよってこんな小娘を連れてくるとは!」
美しい女性は更に声を荒げた。
「そう言うてやるにゃ。確かにワシらの年齢からすると”小娘”ではあるが、彼女はうちはイタチの弟の先生にゃ。人間の齢で数えれば子供じゃにゃい。」
「ほう、あのうちはイタチの弟の。」
『ま、待ってください!一旦、落ち着いて説明してください。口寄せの術と忍猫と貴女と、いったい何の関係が?』
…というより先に自己紹介してほしい。
すっかり頭がこんがらがっださきは痺れを切らして問いかけた。
「ああ、言い忘れていたにゃ。こやつはワシの実の妹。
忍術ではなく、自身の特殊能力として人型になることが出来る忍猫にゃ。」
なるほどそういうことなのか。
さきは軽く顎を上げて興味深そうに女性を見上げた。