第71章 meow
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無事、エビス先生にナルトを預けることが出来たさきらは、閑散とした廃墟ビルの集合する、空区と呼ばれる場所を訪れた。
そこはまるで、昔漫画で見たことがあるような何だか気味が悪い場所。
さきにはとても、ここに人間が住んでいるとは思えなかった。
しかし、カカシとパックンが言うことには、ここに猫バアと呼ばれる闇商人のおばあさんがたくさんの忍猫たちと住んでいるらしい。
『カカシ…ほんまに、こんなとこに人や忍猫がいるの…?』
「そのうち向こうから出迎えてくれるよ。
…それより、ここはどの里にも属さない所謂無法地帯だ。
抜け忍だって潜んでいるような普通じゃない場所だからね…オレから離れるなよ」
『う、うんっ…』
緊張感の走るこの場所自体にドキドキしているのもあるが、「オレから離れるな」というなんとも男らしい台詞をサラリと言いのけたカカシにさきの心臓はいつもよりも高鳴った。
さきは言われた通り、カカシの半歩ほど後ろにピッタリとついて歩いた。
「ニャンだ?お前たち」
「木の葉の忍かニャー?」
「…噂をすれば、どうやらお出迎えのようだね」
カカシが足を止めると、薄暗い通路の向こう側から、二つの小さな影がやってきた。
その姿はどちらも猫。
しかし言葉はパックン同様、人語を話せるようだ。
…パックンに早くに出会っていてよかった。
そうでなければきっと、大声出してびっくりしていたに違いない。
「ン?こっちは…あの有名なはたけカカシか。
こんなところにいったい何の用だニャ?」
カカシに気づいた片方の猫はご丁寧にお座りをして尋ねた。
「彼女が口寄せの術の契約を結べる忍猫を探している。
ついては猫バアさんに会わせて欲しい。」
「猫バアに…ン~…そっちは見かけない顔ニャ。名は?」
もう一匹の猫はいかにも怪しい人を見るような疑いを含む目つきでさきを見上げた。
『夜野さきです』
さきは、「初めまして」と猫に対して生まれて初めて深々と頭を下げて挨拶をした。