第65章 予選開幕
カカシはサスケの耳元に口を寄せ、呪印の施された肩にポンと柔らかく手を置いた。
「これから奥に連れてって……呪印を封印する」
「………予選が終わるまで待ってくれ…本線に出る奴の試合を見たい」
案の定、サスケは要望を出してきた。
気持ちはわかるが、そんなわがままを聞いてやれるほど事態は甘くないことを本人はわかっていない。
カカシはいつになく語気を強めてぴしゃりと断った。
「ダメだ!」
その返事に、サスケは明らかに納得の行かない表情を見せる。
「そう熱くなるな。これ以上放っておけば取り返しのつかんことになりかねないからな…二度もワガママは聞いてやんないよ」
カカシはそのまま観覧席をスイと見上げた。
こちらのやり取りを見つめていたさきが、ウンと頷く。
恐らく、『そのまま連れて行って!』の意だろう。
「ほら…さきもそう言ってる」
そう言うと、サスケはさきの方を見るなり、ふうと息をつき、不服そうな顔でゆっくり地面に手を付き、立ち上がる素振りを見せた。
「わかった…」
もう一言二言文句でも言ってくるかと思いきや、あまりの聞き分けの良さにカカシは拍子抜けした。
(ああ、ナルホド。こういう時にさきの名前を出せばいいのね。)
カカシは立ち上がったサスケの後ろに続き、次の試合が始まる前に出口の向こうへと歩いて行った。