第64章 通過者と棄権者と
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―――― 上忍待機室。
この里に大蛇丸が侵入している情報が回ってからはや数日が経つ。
その大蛇丸が死の森に現れたということは、早い段階でカカシら上忍たちも聞かされていた。
しかし今は試験の真っ最中で、三代目が試験を続けると宣言した以上、試験が行われている死の森に入ることは出来ない…。
この里のどこにいるかも分からない脅威に、里は厳戒態勢をとってはいるが、闇雲に探しても相手を煽るだけで無意味だ。
恐らく次の試験のどこかで、身を潜めていることだろう…とカカシは推測していた。
「厄介事は嫌いだけど…今は様子を見るしかないしねぇ」
やれやれとため息交じりの低い声。
ドッカリと体重を預けた椅子の上で、カカシは本に目を落としていた。
「大蛇丸のことか…」
「そうそう」
「試験の合否も気になる所なのに、面倒ね…」
残念ながら待機しかやることがないアスマ、紅の三人でボヤいていた時だ。
バン!と部屋の扉が勢いよく開く音がした。
誰か入ってきたのだろう。
ンン?とカカシがそちらへ顔を向けると、突然、久しぶりの愛しい人の香りがフワッと鼻腔を擽った。