第61章 異変
――――――ふと、 ツンと鼻の奥を刺激するような嫌なニオイが風に混じっているのを感じた。
『…ん?』
生臭く、雨の日のグラウンドで鉄棒を握った時のような、鼻を突く鉄の濃い匂い。
『ねぇ…なんだろう…鉄?……血…のニオイしない?』
「血だと?…いや」
『いや、絶対してる。これは血のニオイだよ……ね、ちょっとついてきて。』
さきは血の匂いに妙に敏感だ。
それは今までの経験が恐らく関係しているのだろう。
嫌な記憶……それは視覚や聴覚、触覚だけでなく、嗅覚も味覚なんかも強く刺激され、五感全てを使って印象付けられるのだと、さきは身をもって体験している。
眉間に眉をひそめ、「まさか」と口を揃えさきを疑ったままのイズモとコテツを連れ、そのニオイの元へと向かった。
―――――― セミの声が、ヤケにうるさく聞こえた。
なんだか嫌な予感がした。