第61章 異変
暫く、特に何の問題もない里内を確認して回った。
数十名の下忍が、里の1箇所に集まって命懸けで試験を受けている最中だということを除けば、木の葉の里は至っていつも通りの姿だ。
ミンミンとセミの鳴き声が聞こえる。
その音を乗せて運んでいるのは、少し湿った熱い風。
その風が木々に当たると、サワサワと心地よく葉が揺れて、枝葉が優しく擦れ合うその音は、セミの声と響き合い、夏の音を色濃く奏でた。
じんわりと額に滲んだ汗が光る。
その頭に、ふと里に連れ帰った忍の存在が浮かんだ。
(…そう言えば、あの忍はどうなったんやろう。あれから何か聞き出せたのかな。)
第一の試験は終わったことだし、イビキの尋問・拷問にかける手筈になっていただろうから…そうするともうそろそろといった頃だろうか。
「どうしたさき?浮かない顔して」
『えっ、いや…ちょっと気になる事があって…大したことじゃない…と思うんやけど』
「なんだそれ?聞くくらいはできるんだから、言ってみろよ」
(今私の独断で余計なことを言って混乱させちゃまずいよね…)
優しい心遣いには感謝すべきではあるが、そう判断したさきは、その件に直接関係はしないであろう質問を2人に投げかけた。
『抜け忍って木の葉の里ではどう処理されるか知ってる?』
「抜け忍って…まあ重大犯罪人だろ?まず必ず里から追っ手がつく。拘束され、間違いなく監獄行きだろうな」
『そのあとは?殺されるの?それとも…』
「さぁ…詳しい事は分からんが…鬼灯城へ送られると終身刑と変わらんだろう。罪の重さによっても刑は色々だろうけど…」
首を傾げるコテツに、今度はイズモが続けた。
「稀に24時間監視がつく事が条件で、里内外で好きに生きてる奴もいるさ。本当に稀だけどな。死刑になる奴も沢山いる。」
『そうなの?…ふーん…忍者の世界ではそうなんだね』