第3章 Talking Night
「お前も色々あったんだな。 平和なそっちの世界でも。」
『そうやね~…こっちの世界では、私のこんな過去なんて、大したことないかもしれんけど…』
「……さきは……自分を赦すことはないのか?」
カカシの問いに、さきはピクっと肩を揺らして反応した。
“赦す” …か。
こんな私が…大切なものを二度も無くした無力な私が、赦されていいわけなんて…
『多分ね』
きっと無い。
『そんなことしちゃったら私、生きる意味が無くなるもん。 …死ねないくせに。』
自分が死んだって死者には会えないんだ。
だから私は彼らを風化しないために生きる。
私は私を赦さないから生きられる。
だから、“こちらの世界”で生きる事になったらば、忍になろうと思ったのだ。
“こちらの世界”で、私が迷わず生きられる意味を見つけるために。
大切なものがない世界で、私が死を望まない理由を。
「オレもだよ」
自分を赦すことなんてできない。 と言いたいのだろうか。
カカシの声は、低く、優しく、深く、甘かった。
深夜の空気は今日も、重く、少し生暖かい。
でも、すぅっと二人の間を通り抜ける風は、優しく涼しかった。