第53章 月下美人 *
さきは、両手で顔を覆い隠し、ハァハァと口から息と熱を逃がすことに精一杯だった。
カカシはその後も自分の要求通り、服を捲り上げたり、脱がしたりすることはなかった。
服を着せたまま上から順序良く愛撫を続けたカカシの手は、太ももを擦り、尻の丸みを確認するように撫で、柔らかいキスを落としながら下る唇は、膝や足先にまで到達した。
「さき、顔なんで隠すの?」
ピチャピチャと厭らしい唾液の音の合間に、カカシが甘い声で尋ねる。
さきは息も絶え絶えに、恥ずかしいから、とだけ答えた。
カカシは私の気持ちを知ることなく私のことを抱くのだろうか、理性と愛欲とではどちらが勝るのか、などと彼を試そうと思った自分が、恥ずかしい。
そして、それに本当に拘るのならこんなにもアッサリと体を許そうとするのか?と自分の気持ちと行動の矛盾点に気づいて、恥ずかしい。
カカシのことだから、それすらも見透かされていそうで、恥ずかしい。
傷や痣だらけの体を見られて、触られて、こんなにも…感じてしまって、恥ずかしい。