第3章 Talking Night
私は15歳の時に両親を亡くした。
“旅行中の事故だった”、と言う。
私はその時、母の友人に預けられていて、二人は久しく県外へ旅行へ行ったのだった。
病院で最後に見た大好きな彼らは、顔を見ても誰か判別できないような状態で、果たしてそれが自身の親なのかすらも怪しかった。
唯一、私たちの繋がりを確認できたのはDNAの鑑定結果のみ。
頭の悪い私はそんなデータなんてよく分からなかったが、専門の方がそういうのだから、きっと間違いないのだろう。
…私は、なんとか高校を卒業した。
そこで出会ったのが、親友のあやかちゃん、そして後に私の夫となる健太だった。
二人は私のよき理解者であり、支えであり、大切な大切な存在となった。
うちの高校は、様々な事情を抱えた幅広い年齢層が通っていた。
健太は、私より一回り年上の、随分と大人の男性だった。
健太は私を大切にしてくれた。
彼からのアプローチを経て恋仲になり、あやかちゃんとは、ほぼ毎日一緒に過ごしていた。
アルバイト先も一緒にしたりなんかして。
父と母が好きだった剣道は、インターハイ個人戦に出場するまで続けた。
1位にはなれなかったけど、喜んでくれるかなって思って頑張った。
二十歳になった頃、健太は私に結婚を申し込んできた。
嬉しかった。
いつも帰る家には、誰もいない真っ暗な部屋。
一人ぼっちの食事。
おかえり、や、行ってらっしゃいの声もなくなってしまっていた。
それが再び手に入ったことへの喜び…またその相手が、最愛の彼であったことに、私は人生で最高の幸せを感じていた。