第52章 大切なこと
―――――― カカシと再不斬の戦いは、ゆっくりと、長く続いていた。
ヒラリ、ヒラリと、先程までの激戦がまるで嘘のようにカカシは再不斬の攻撃を簡単に躱した。
再不斬は、自分の動きが鈍くなってしまっているその原因に気付いていなかった。
(再不斬…今のあなたでは…―――)
「今のお前じゃオレには勝てないよ」
遂に、カカシは二本のクナイを持ち、戦いに終止符を打とうとした。
「さよならだ 鬼人よ!」
カカシの声のすぐ後に、肉を裂く音が響いた。
―――――― ぶらんと垂れる腕。
―――――― ボタボタと流れ落ちる赤い血…
クナイで腕を負傷した再不斬は、両腕が使えなくなり、もう印を結ぶことすら不可能となった。
「おーおー派手にやられてェ… がっかりだよ…」
『……あれは…』
そこに現れたのは、何十人もの部下を引き連れた、黒幕、ガトー。
「再不斬、お前にはここで死んでもらう。 お前に金を支払うつもりなんて初めから毛頭ないからねェ…」
『なんて…よコイツ…』
ガトーのあまりにも無慈悲なセリフに、さきは怒りで声が震えた。
ガトーはタズナを殺したとて、再不斬にその報酬金を払うつもりはなく、その依頼を遂行しているところで、それに応戦するさきたち他里の忍もろとも処理する予定だったと話した。
「カカシ…すまないな…タズナを狙う理由がなくなった以上、お前と戦う理由がなくなった」
「ああ…そうだな」
戦意をなくした再不斬を、周囲のガトーの部下は高笑いでバカにした。
下衆く、汚く、腐った笑い方で。
ふとガトーは倒れている白に気が付いた。
「こいつには借りがあった… くっ死んじゃってるよコイツ」
そしてあろうことか、その白の頭を蹴飛ばした。
「てめー!なにやってんだってばよォコラァ!!」
ナルトはぶち切れ、ガトーに向かって走りだそうとした。
さきも怒りではらわたが煮えくり返りそうな思いだった。
しかし、
『ナルトくん、周りの敵の数を見て。ちゃんと状況を判断するんよ。』
さきはその気持ちにぐっと耐え、ナルトに両腕を回し、彼を抑えた。