第51章 SILENT KILL
再不斬もカカシも、暫くの間動かなかった。
正しくは、動けなかったのかもしれない。
互いに一言も発することなく、徐々に広がってゆく足元の血溜まりの主を見つめていた。
しかし、その沈黙を破ったのは再不斬だった。
「見事だ…白。 まったく俺はいい拾い物をしたもんだ。最後の最後でこんな好機を与えてくれるとは!!」
白ごと斬ろうと首切り包丁を振りかぶる再不斬。
カカシは勢いよく後方へ飛んでその攻撃を躱した。
急に意味深な言葉を残して目の前から立ち去り、再不斬を庇って死んでいった白。
その彼をまるで道具のようにする再不斬のその非情な行動を見たナルトが、怒りにまかせて向かっていこうとしている姿がさきの視界に飛び込んだ。
さきはそちらへすぐさま向かい、ナルトの二の腕をしっかりと掴んでそれを制した。
『ナルトくん…ここで、一緒にしっかり見てるのよ。』
「そうだ…こいつはオレの戦いだ!」
―――――― 私も、人の死に様を見たのは初めてのことだった。
私は死ぬその瞬間に立ち会ったこともない。
見たことがあるのは、ぼろぼろになった、“ただそこにある空っぽの遺体”だけ。
(だからこそ、私も見てなきゃいけない。 この戦いから目を背けてしまったら、彼らの生と死どちらからも目を背けてしまうことになるもの。)
さきのナルトの腕を掴む手に、ギュッと力が籠った。
さきの後ろでは、サスケの様子を気にするサクラの心配そうな声が聞こえていた。
気を利かせたタズナが、サクラと共にサスケのもとへ駆け寄っていった。
__________ 私だって気になっていた。
何か良くない予感もしていた。
悔しそうに肩を震わせるナルトくんにも気づいていた。
でも…
さきは、そこから動くことはなかった。